*パニック障害について

仙骨・骨盤から見た、パニック障害の治し方

龍眼の樹
龍眼の樹

 

 

 パニック障害は、突然起こる動悸や発汗、頻脈、震え、息苦しさ、胸部の不快感、めまいといった身体の異常とともに、このままでは死んでしまうというような強い不安感に襲われる病症です。
この発作は、「パニック発作」といわれ10分くらいから長くても1時間以内には収まりますが、何回か繰り返すうちに、また発作を起こしたらどうしようという、パニック発作に対する強い恐怖心や不安感、いわゆる「予期不安」が生まれるようになります。
 そのため、大勢の人が集まる場所や、過去に発作を起こした場所を避けるようになってゆき「広場恐怖(外出恐怖)」となってゆきます。

 

 パニック障害になる人の中で比率の高いのが、もともと普通の人よりもむしろ身体能力の高い、腰仙関節の動きが滑らかな、呼吸運動の大きい人たちです。
こういう人は、行動力もあって、常に忙しい状態というのが体質的に合っています。
活動的で、仕事でも一遍にいくつものことを同時進行で進めてしまう。
本を読む場合でも、一冊ずつ読むのではなくて、何冊か同時に並行して読んだりします。
仕事でも判断を迷わないので、行動しながら次々に決断でき、いいリズムで行っているときはすごくいい。
 ところが、知らないうちに疲れがたまってしまって、そのリズムが壊れてしまうのです。
「常に動きっぱなし」という状況が止まってしまったときに、一気に腰仙関節・腰椎5番が弾力を失ってしまいます。
 今の社会の目まぐるしさに適応しやすいタイプの人、女性の場合であれば、バリバリのキャリアウーマンの人がこういう状態になりやすい。
もともと腰仙関節に弾力があったものが、一気に固まってしまうことによって、大きな反動がくるのです。
それでいきなり呼吸が苦しくなったり、ドキドキしてもう死ぬんじゃないかというくらいなってしまったりする。
 ‟パニックとは、激しい反応を起こすことで、全身の緊張をゆるめようとしている身体の反応です。”
発作の時点でできることはあまりないのですが、パニックに襲われたら、腕を抱きかかえてその場にしゃがみ込むとよい。
これが呼吸が一番楽になり下腹で呼吸しやすい、落ち着きをとりもどすために現実的に使いやすい方法ですが、いざ発作が起こってしまうと、なかなか対処しきれない場合も多いかもしれません。
 パニックになりやすい体質の人は、日頃からとくに腰仙関節・腰椎5番に弾力をつけて呼吸を深くしておくことが完治への一つの道です。

 


 仙骨・骨盤の後ろへの傾きが過緊張を引き起こす‼

 

 現代人のストレス状態は、「ヨーイドン」のスタート直前の緊張状態と同じです。
足腰は後ろにあるが、上体は前のめりでいつでもスタート=反応しようとしている状態。
この緊張状態が解除できずに日常化してしまっています。
常に何かに追い立てられているような不安を抱えた身体性です。
 この不安を抱えた身体は、仙骨を中心として骨盤が後ろに傾き、同時に胸が過緊張におかれていることと、深いつながりがあります。
仙骨・骨盤が後ろに傾くと、足の裏にかかる重心が後ろに移動し、あごと首が前に突き出て姿勢が猫背状態になります。
こうなると常に胸の中心に負担をかけ、胸に緊張が集中してしまうのです。
骨盤から下は後ろ向き、上半身は前のめりといういびつな姿勢です。
胸の中央、「檀中」というツボは鍼灸医学的にみた免疫活動の要です。
胸が硬直するとアレルギーや自己免疫疾患など、「免疫の暴走」ともいえるさまざまな症状を敏感に起こしやすくなります。

 また、胸というのは感情に直接関係する所です。
自律神経失調症で不調なとき、パニック障害のように、突然息苦しくなったりドキドキするとき、あるいは、過敏性腸症候群で、お中が急に痛くなって下痢や便秘になったりするときも、すべて檀中穴に著しい反応が出ています。 
現代人は、胸椎5番(神堂穴)からはじまって、背骨の横の筋肉、脊柱起立筋が首の上のほうまで張り詰めたような、凝ったような緊張パターンが大変多いのです。
典型的なストレス状態です。
 この猫背状態=檀中=胸椎5番を中心にした胸の緊張は、具体的にどういう状況を生むかといえば、呼吸が浅くなるということです。
骨盤中央の仙骨は、呼吸とともに前後に動きます。

骨盤は、吸うときは後ろに動き、吐くときは前に傾きます。
ところが、仙骨が後傾したままの状態で硬くなってしまうと、骨盤の動きが制限されて深い呼吸ができなくなります。
仙骨が前に動かないから、吐くときに浅くしか吐けない。
すると「息が吸えないと」脳が錯覚してしまうのです。
息が吐ききれないのにさらに吸おうとするから、過換気的になるのです。
 結局のところ、パニック障害は、その人の身体性にかかっているといっても過言ではありません。
不安定で過緊張におかれた身体がその原因を引き寄せているのです。

 

(参考文献 片山洋次郎『骨盤にきく』)

 

運動能力の高い人にかぎって引き起こすことが多い
運動能力の高い人にかぎって引き起こすことが多い